SSブログ

本棚しなるほど「an an」 [猫のび]

大学生になった。

いよいよ上京するときが来た。

まず準備であるが、1.5合炊きの炊飯器と自転車と叔父からもらった7インチのモノクロテレビとおばあちゃんに幼稚園卒園の時買ってもらった勉強机とカセットとカセットデッキとチューナーと室内アンテナと大事なファッション雑誌一式と....

などなど、身の回りで使っていたものほとんどを宅配便で下宿へ届けた。

下宿屋のおばさんは「まあこんなに荷物が届いたのは初めてよ」とびっくりしていた。

それを一人で4畳半の部屋にセッチングしていくのだが一日いっぱいはかかっただろうか。寝るところを確保しつつ荷物の整頓はこのち一週間は続いたと思う。

そうこうしているうちに時間は過ぎていくものである。

「はてさてこれから自分は何をしていこうか?」などと考えていたのだがさっぱり何をしていいのかはわからなかったのである。

まず大学の講義に出て勉強しなければならないが、友達は(いや知り合いは)誰一人としていないローンレンジャーなのである。

コミュニケーションの台のへたくそな自分がどうやったら友達ができるか?

作戦を考えた。「消しゴム」作戦である。

「あの~消しゴム貸してくれませんか~」甘いささやきをするのであった。

「ああ」すんなり貸してくれた。

ここからが芋づる式である。友達の多い彼だったのですぐに5人ぐらいの友達ができた。

下宿は大学の隣。

友達ができたところで、何が始まるかといえば5人もいれば麻雀ができる。

大学の隣=遊べるスペースの確保がしやすい=麻雀が始まる

この公式で友達が入れ代わり立ち代わりと、下宿といっても学生寮なので先輩同輩12にんはいる。
--------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

友達との交流ができたところで、ある願望がわいてきた。

「一人の時間が欲しい」

そもそも上京したのは一人暮らしがしたかったためである。

しかし、出会いというものは偶然にあるものである。

大学4年の先輩に私的にいうところの「カラス族」がいたのである。

かなりの影響力を受けた。それは「an an」(創刊号を持っていらっしゃった)に代表される女性雑誌のコレクターでありまたファッションの世界観に感化されてしまったのである。
つまり「an an」のとりこになってしまったのである。
---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

「an an」が毎週金曜日発行の「Weekly an an」になってから毎週金曜日朝セブンイレブンの前で待っていた。朝食と「an an」を買うためである。もともとセブンイレブンの名前の由来はam7時からpm11時まで開店していたからであり、7時開店まで店の前で待っていたのである。
(現在は24時間営業が当たり前の時代であるが当時昭和50年代の話である)

---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

そんなにごつい雑誌ではないので気にはしていなかったが、買って読んで保管していくうちにまあたまるたまる。自分の運んできた棚には収まりきらなくなってしまった。
そして、背の高い白い本棚を買った。

---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

大学生活にも慣れてきて、新しく4畳半の部屋から6畳の部屋に移り、毎度のように繰り広げられる麻雀に少し小さめのテレビを買って「オールナイトフジ」と「ベストヒットUSA」のBGMが加わりだすとファッション雑誌の詰まった本棚と相まって私の部屋は異空間になっていた。

麻雀の負けた人は、ホカホカ弁当に全員の夕食を買い出しに行くというルールであった。私はよく買い出しに行った。

いろいろあったが、大学生活は楽しかったのである。

---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

毎週発行される「an an」を読みながらその当時当たり前のように若者文化が多様性と個性の追求に供給が十分されていたのは確かである。
お金がなければアルバイトでお金を稼ぎ需要を満たしていく。
おしゃれにお金を使うという循環が喜ばしく成り立っていた。

---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

本棚は、私の「美意識」の基礎を作り上げていくために次第に次第にその重みでしなっていったのである。





nice!(1)  コメント(0) 

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。