昔々。ちょっと昔。

幼稚園の卒園集合写真撮影。

「みんな並んで並んで~」

ユリ組、壇上へ上がる。

正面のカメラさんが一言。

「こっち向いて笑ってくださいね~」

私は、笑えなかった。

正面の乾板カメラがどうも気になって、見つめていたのである。

集中していたのか、口をあんぐり開けて、本気で観ていた。

「ではとりま~す」

パシャ

できあがった卒園アルバムには、口を開けたままの自分が写っていた。



「みる」にはいろいろな漢字が当てられる。

ただ単に「みる」は:「見る」(英語では「look」)

テレビを「みたり」するのは:「観る」(英語では「watch」)

富士山をながめて「みる」のは:「覧る」(英語では「view」)

などなど。



あのとき私は、生まれて初めて遭遇したカメラを、

「なんだろうこれは」

といぶかしげに見つめていたのである。



今でも、興味をそそるものは「見つめてしまう」のだ。